終わりの始まり

旅行とか、美味しい食事とか始まった後は終わってしまうことに寂しさを感じることが多い。日曜に明日のことを考えて憂鬱になるあれと似ている。

 

20弱の事務所にアプライし、結局教授の紹介で決まったのはいささか不服だった。今思えば、自分の知っているスイスの建築家なんて超が付くほどのビッグネームばかりで当然のことだったように思う。まだその程度ですよね、とちょっと悔しいと決まった嬉しさが混ざって複雑だった。

 

あれやこれやと準備している内に出発日になった。彼女との感動的な別れもなく呆気なくスイスに来てしまった。

さて困った、家がない。

最近読んだ本にはチューリッヒの空室率は1%以下らしい。まず2週間ほど先に働き始めていた先輩の家に居候した、その後は事務所の友人の部屋に1週間、そして事務所の別の友人の親がゲストハウスを持っているということでそこに1ヶ月滞在した。今はまた別の友人の家で2月まで生活することになっている。誰も自分の皿を洗わない、共同生活は難しい。

 


チューリッヒで部屋を契約するのはとても難しく、まずウェブで空室を探し、メールでアプライし、そのメールが気に入ってもらえれば部屋のツアーに招待される。そのツアーには約30人ほど人が来てそこから1人が選ばれるという過酷っぷりである。

恐らく1年間ころころと寝床を替えながら過ごすことになるだろう。

 


肝心の仕事はというと、朝の8:30から夕方の17:30まで、事務所には超高級エスプレッソマシンが置かれ、珈琲は飲み放題、毎週火曜日と木曜日にはみんなで朝にパンやフルーツを食べるイベントがある。昼休みには事務所の横を流れる川で泳ぐ。”The”が付くほどヨーロッパである。

20人弱の事務所で半数が国外出身と非常に国際的な事務所で、私を含めた内4人がインターン

ほとんどのプロジェクトが実施設計中で、基本的には模型作業や3Dパースの作成。英語が決して達者でない自分でもなんとか仕事はこなしている。最近は、コンペチームのプロジェクトに携わっている。これは少し頭を使ったり会話したりとステップアップした気がして嬉しかった。

日本とは異なり、インターンの質が良い意味で異常で現場に足を運んで職人に指示を出すインターンもいればボスに新しいコンペを進言するインターンもいる。とにかく圧倒的な経験値の差を日々感じている。が、焦っても仕方がないのでせっせと毎日働いている。

 

1年間のカウントダウンが始まって焦りを感じながら、夏には少し立派になっていることを期待してここでの生活をゆっくり楽しみたいと思う。

プロローグ

当時阿部寛主演の「結婚できない男」を観てスーツを着ずに働き、肉を焼いてワインと頂き、食後はクラシック音楽を聴くような生活に憧れたのが何かの間違いだったと今は思う。

このドラマの描写は数多くの人を勘違いさせたに違いない。

家族に理系が1人もいない家庭で育ち、なぜ理系で建築学科を目指したのかは自分でもわからない。気がついたらなんとなく方向が決まっていた。

「自分の家自分でつくれたらいいや〜でっかいもの好きやし」から4年、僕はスイスの建築事務所で1年間のインターンをしている。

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スイスに来て2ヶ月弱が経って、少し生活にも余裕がでてきた今、自分の体験や日頃の心情それから今までのことを少しずつ文字で残そうと思う。

 

どれくらい書けるか、残せるかわからないけど頑張ろうと思う。これはそのプロローグ。